【怒羅権の現在】2026年の警察庁資料から見える組織犯罪の変化
2026年現在、怒羅権の実態を考えるうえで重要な資料が、警察庁組織犯罪対策部が2026年4月に公表した「令和7年における組織犯罪の情勢」である。
この資料では、匿名・流動型犯罪グループ(通称トクリュウ)の活動実態、暴力団との関係、外国人犯罪組織との連携、資金獲得犯罪の検挙状況などが整理されている。ただし、これは怒羅権だけを対象とした調査ではない。掲載された統計を、そのまま怒羅権の構成員数や犯罪件数として扱うことはできない。
警察庁の概要版によると、令和7年中に匿名・流動型犯罪グループによるものとみられる主な資金獲得犯罪の検挙人員は合計6,679人だった。
警察庁「令和7年における組織犯罪の情勢」2026年4月公表
| 犯罪の種類 | 検挙人員 |
|---|---|
| 詐欺 | 3,075人 |
| 薬物事犯 | 1,887人 |
| 窃盗 | 1,020人 |
| その他の対象犯罪 | 697人 |
| 合計 | 6,679人 |
数字から分かるのは、現在の組織犯罪が暴力的な抗争だけでは説明できないということだ。詐欺や薬物、窃盗など、多様な資金獲得活動が組み合わさっている。
警察庁は、匿名・流動型犯罪グループの中核的人物として、暴力団の現役・元構成員、暴走族OB、風俗営業関係者、外国人犯罪組織のメンバーなどを挙げている。これらの人々が状況に応じて連携し、犯罪に必要な道具やサービスを提供するグループも利用しているという。
また、警察庁は2025年10月に匿名・流動型犯罪グループ情報分析室を設置。2026年4月には、匿流ターゲット取締りチーム(T3)の体制を200人に倍増させた。組織の表面的な名称だけでなく、犯罪収益を集める中核人物や資金の流れを解明する方向に捜査の重点が置かれている。
この動きは、従来型の不良グループや準暴力団をめぐる捜査環境にも関係する。かつてのように固定されたメンバーや上下関係だけを追っても、複雑化した犯罪ネットワークの全体像を把握できないためだ。
なお、6,679人という数字は、怒羅権やチャイニーズドラゴンの構成員数ではない。匿名・流動型犯罪グループに関連するとみられる複数の犯罪類型を合算した全国規模の数字である。
2026年現在、怒羅権は解散したのか
怒羅権の現在については、解散したとも、結成当時と同じ一枚岩の組織として存続しているとも断定できない。
警察庁の2026年公表資料は、怒羅権単独の現役構成員数や支部数を公表していない。東京都の2026年10月13日更新の説明資料も、準暴力団を含む匿名・流動型犯罪グループ全般の特徴と対策を扱っており、怒羅権固有の組織規模を示すものではない。
過去の報道では、チャイニーズドラゴン内部に複数のグループが存在し、地域や利害をめぐる対立が起きていたことも伝えられている。こうした状況を踏まえると、現在の実態を理解するには、歴史的な怒羅権、チャイニーズドラゴンと呼ばれる関連集団、個別の事件に登場する人物を区別する必要がある。
佐々木秀夫については、2022年のFRIDAYの取材時点で、大工として働きながらNPO法人の代表を務め、YouTubeでも情報を発信していたと報じられている。それ以降の活動状況を同じ情報だけで2026年現在まで断定することはできない。
一方、汪楠については2025年11月5日の東京地裁判決が大きな転換点となった。少なくとも、メディアで更生支援活動を紹介されていた人物が、その後の重大事件で懲役13年の判決を受けたという経緯は、怒羅権関係者の現在を考える際に欠かせない事実である。
【ネット上の誤解を検証】怒羅権について知っておきたい5つの事実
怒羅権をめぐる情報は、過激な事件、元メンバーの回想、犯罪ジャーナリストの解説、SNS上の断片的な情報が混在している。検索するときに混同しやすいポイントを整理する。
1. 怒羅権は最初から犯罪組織だったのか
結成当初の背景は、仲間同士の連帯や学校生活での孤立、不良文化への憧れなどにあったと創設期の関係者は証言している。最初から大規模な犯罪組織として計画的に作られたという説明は、当事者の証言とは一致しない。
2. 怒羅権とチャイニーズドラゴンは完全に同じなのか
歴史的には区別が必要だ。警察庁の平成26年版資料では、怒羅権に別の不良グループが合流した集団をチャイニーズドラゴンとして説明している。報道で両者が併記されても、結成時から同一の組織だったと理解するのは正確ではない。
3. 怒羅権のメンバーは全員、中国残留孤児2世・3世なのか
創設期は中国残留邦人の子弟が中心だったが、その後はメンバーが増え、別の不良グループも合流したとされる。したがって、すべての関係者を同じ出自とみなすことはできない。
4. 佐々木秀夫と汪楠は同じ立場の創設者なのか
佐々木は初代総長として紹介され、自身の著書でも結成経緯を説明している。汪も創設期メンバーとして複数の媒体で紹介されてきたが、2025年の週プレNEWSでは、汪の創設者としての立場に異論を唱える関係者の証言も掲載された。両者の肩書を無条件に同一視するべきではない。
5. 準暴力団なら暴力団対策法で指定されているのか
そうではない。準暴力団は警察が犯罪集団の実態を把握するために使う区分であり、指定暴力団とは法的な扱いが異なる。暴力団対策法の指定対象でなくても、個別の犯罪行為が処罰されないという意味ではない。
これらの点を確認する際には、警察庁の組織犯罪情勢、警視庁の発表、裁判報道、当事者の著書やインタビューを照合することが有効だ。特に、元メンバーの回想は貴重な証言である一方、内部の立場や記憶によって説明が異なる場合がある。
【怒羅権に関するよくある質問(FAQ)】
Q1:怒羅権はいつ、どこで結成されたのですか?
A1:1980年代後半の東京都江戸川区葛西周辺が発祥とされる。佐々木秀夫は1986年に仲間6人と結成したと説明している。一方、汪楠は明確な設立日はなく、名称が付いたのは1988年頃と証言している。
Q2:怒羅権という名前の由来は何ですか?
A2:「ドラゴン」という呼び名に漢字を当てたという汪楠の証言がある。佐々木秀夫は「怒」を怒り、「羅」を修羅、「権」を権利と説明している。命名の経緯については複数の証言が存在する。
Q3:怒羅権の初代総長は誰ですか?
A3:一般に初代総長として紹介されているのは佐々木秀夫(本名・張栄興)である。自身の著書『怒羅権 初代』でも、結成の経緯や当時の経験を語っている。
Q4:汪楠は現在どうなっていますか?
A4:2023年の東池袋の強盗事件をめぐり、2025年11月5日に東京地裁で懲役13年の判決を受けた。事件では犯行を主導した立場だったと認定されている。
Q5:怒羅権は2026年現在も活動していますか?
A5:怒羅権単独の現役構成員数や組織規模を示す2026年の公的統計は確認できない。チャイニーズドラゴンと呼ばれる関連集団の事件報道はあるが、創設期の怒羅権と現在の関係者を一括りにすることはできない。
Q6:怒羅権は暴力団なのですか?
A6:一般に準暴力団や半グレ集団として扱われてきたが、指定暴力団とは異なる。準暴力団は警察上の分類であり、暴力団対策法に基づく指定暴力団と同じ法的区分ではない。
【プロの結論】怒羅権の歴史から読み解く、組織犯罪の本質
怒羅権の歴史を振り返ると、ひとつの不良グループが、社会的な孤立、仲間同士の結束、暴走族文化、抗争、犯罪への関与、人的ネットワークの拡大を経て、異なる性格を持つ集団へ変化していった過程が見えてくる。
その出発点には、中国残留孤児の家族が直面した言語や文化の壁、学校でのいじめ、生活環境の問題があった。こうした社会的背景を理解することは、歴史を正確に捉えるために欠かせない。一方で、背景への理解と犯罪行為への責任追及は、明確に分けて考える必要がある。
2026年の警察庁資料が示しているのは、組織犯罪の形が変化しているという現実だ。固定的な組織名や上下関係だけでなく、匿名性、流動的な人員構成、犯罪収益を管理する中核人物、複数の犯罪集団の連携が捜査上の重要な課題になっている。
怒羅権を理解するために重要なのは、次の3つの視点である。
- 歴史を区別する:1980年代の葛西で生まれたグループと、後に合流・拡大したチャイニーズドラゴンを同一の時点・組織として扱わない。
- 人物の責任を区別する:佐々木秀夫や汪楠の証言・経歴と、それぞれの事件における司法判断を混同しない。
- 現在の統計を正しく読む:警察庁の匿名・流動型犯罪グループ全体の統計を、怒羅権だけの規模や犯罪実績に置き換えない。
怒羅権は、単なる伝説的な不良集団でも、現在の犯罪組織をすべて説明する名称でもない。葛西での結成から組織の拡大、元メンバーの証言、個別事件の司法判断までを時間軸に沿って整理することで、その実態をより立体的に理解できる。
2026年以降も組織犯罪の形態や警察の捜査手法は変化していく。過去の武勇伝や刺激的な肩書に左右されず、公的資料と司法記録を基準に情報を読み解くことが、怒羅権の歴史と現在を正しく理解するための判断基準となる。 (出典: 怒 羅 権(Yahoo!ニュース))